情報学専門部会報告書

要 約

 コンピュータが実際の機械として世に出たのが1940年代である。それからわずかの間に、コンピュータとその利用技術は、飛躍的な進捗をとげ、我々の生活や社会に大きな影響力を持つようになった。

 この急速な発展には、機械としてのコンピュータや通信機器に関する電気電子工学的な進展とともに、情報を扱う科学技術の進展が不可欠であった。情報を扱う科学技術は、情報を生成し、蓄積し、伝達し、加工するという作業のための科学技術である。その基本原理は、情報を0と1の列で表わす(デジタル化)と、それを単純な演算の組み合わせで処理する(計算化)の二点である。

 本報告書は、この情報科学技術の基本原理の意味と意義を解説し、それに起因する特質を示す。また、様々な情報科学技術の基本的な仕組みを解説し、その仕組みからも特質を述べる。そして、これらの特質から、情報科学技術が、このように飛躍的な進化を遂げたのはなぜか、そして、明暗両面で、我々の生活や社会に大きな影響を与えるようになったのはなぜか、を説明する。その上で、情報科学技術の原理と仕組みを知ることの重要性について論じる。情報科学技術の急速な発展にともなう変化や影響に流されることなく、情報科学技術を自らの生活の中に上手に取り込み、自らの知的活動が広がることを楽しみ、新しい社会の仕組みに参画していくには、その根幹にあるものを知っておくことが欠かせない。急速に進展し続ける科学技術分野だからこそ、目の前に提供されてくる機能や機器や商品だけを追ったのでは今日の常識も明日の非常識になりかねない。原理と仕組みに基づく特質を押さえておけば、次々と現れてくる新しいことがらにも自ら考え学んで対応していくことができるのである。 本報告書は以上の点を、科学技術リテラシーの普及を考えている有識者ならびに情報科学技術の教育者を対象に述べたものであり、6章から構成されている。第1章では、報告書全体の概観を述べるために、情報科学技術の本質とそれに起因する特質について述べる。第2章では、基本原理(デジタル化と計算化)について、その意味や意義などを詳しく述べる。第3章では、情報科学技術の仕組みを述べる。情報科学技術には実に様々なものがあるが、それらに共通する仕組みとその考え方を述べる。さらに、いくつかの重要な技術について、その仕組みを解説する。第4章では、さまざまなデータをデジタル化し計算することの利点や問題点について述べる。第5章では、情報科学技術の社会的な影響について、情報科学技術のどのような特質が、その原因になっているのか、という点を中心に、事例紹介の形で述べる。そして最終章である第6章では、それまでの議論をまとめる形で、なぜ情報科学技術リテラシーを学ぶことが重要なのかを、社会のため、と個人の生活を豊かにするため、の二つの側面から述べる。